事実と違う・身に覚えのない口コミへの削除申請の進め方
※本記事は一般的な情報提供です。Googleのポリシーの解釈や、名誉毀損など法的な判断が関わる個別のケースについては、弁護士などの専門家にご相談ください。
「そんな治療はしていない」「そもそも、こんな患者さんは来ていないはずだ」——事実と違う口コミ、身に覚えのない低評価がつくと、院長としてはどうしても「消したい」が先に立ちます。
Google口コミには、ポリシー違反の投稿を報告し、審査のうえで削除してもらう仕組みがあります。ただし、最初に現実をお伝えすると、「事実と違う」という主張だけでは、削除されないケースが少なくありません。 Googleは投稿内容の真偽を判定する立場にはなく、削除の判断は「Googleのポリシーに違反しているかどうか」で行われるからです。
だからこそ、申請が通るかどうかは「どのポリシー違反に当たる話なのか」を切り分けることにかかっています。この記事では、削除申請の進め方を、違反の類型から手順、通らなかった場合にできることまで、一般論として整理します。
大前提: 削除できるのは「ポリシー違反」の口コミだけ
まず、削除対象にならないものを確認してください。
- 星が低いだけの口コミ
- 医院への批判的な意見・厳しい感想
- 患者さんの主観的な評価(「対応が冷たかった」「待たされた」など)
- 医院側の認識と食い違う、治療や対応への不満
これらは、医院にとって不本意でも、Googleのポリシー上は「正当な意見の表明」として扱われます。「事実と違うはずだ」と感じても、Google側が真偽を検証する材料を持たない以上、原則として削除には至りません。
逆に、次の節の類型に当てはまるものは、報告する価値があります。申請は無料で、却下されても医院側にペナルティはありません。該当しそうなものは、感情的にならず、手順に沿って淡々と進めるのが得策です。
Googleのポリシー違反に当たる主な類型
Googleは、口コミを含む投稿コンテンツについて「禁止および制限されているコンテンツ」のポリシーを公開しています。歯科医院の口コミで問題になりやすい類型は、次の通りです。
スパム・虚偽のコンテンツ
実在しない来院に基づく投稿、botや複数アカウントによる投稿、同じ内容の繰り返し投稿などが該当します。「来院した形跡がまったくない」「短期間に同文の低評価が複数ついた」といったケースは、この類型での報告を検討します。
利益相反
競合医院の関係者による投稿、元従業員による報復的な投稿、自院のスタッフや関係者による自作自演の好意的な投稿などが該当します。競合関係者と疑われる投稿は、この類型で報告します。なお、自作自演は自院側が絶対にやってはいけない行為でもあります。
なりすまし
他人や組織を装った投稿。患者さんを装って組織的な攻撃を行っている場合などが該当します。
冒とく的な表現・露骨な表現
罵詈雑言や下品な表現を含む投稿。批判そのものは対象外ですが、表現が冒とく的であれば該当しえます。
嫌がらせ・いじめ、差別的・ヘイト表現
特定個人(院長やスタッフ個人など)への執拗な攻撃、個人を誹謗する内容、人種・国籍・性別などに基づく差別的表現を含む投稿が該当します。スタッフの実名を挙げて人格攻撃をしているようなケースは、この類型が軸になります。
個人情報
投稿者以外の個人情報(氏名、住所、電話番号、病気や治療に関する情報など)を含む投稿は対象です。他の患者さんの情報が書かれている、スタッフの私的な情報が晒されている、といった場合に該当します。
無関係なコンテンツ(オフトピック)
医院の体験と無関係な宣伝、政治的な主張、他店への言及だけの投稿など、来院体験と関係のない内容が該当します。別医院と間違えて書かれた口コミも、内容によってはこの類型で報告できる場合があります。
違法なコンテンツ・危険な行為など
違法行為を助長する内容、暴力的な表現、テロ関連など。医院の口コミでは稀ですが、類型としては存在します。
注意したいのは、「類型に名前がある」ことと「Googleが違反と認定する」ことは別だという点です。認定はGoogleの審査によるもので、同じ類型でも結果が分かれることがあります。
申請の前にやっておくこと: 証拠の保全
審査の過程で投稿が編集・削除されたり、アカウントが消えたりすると、後から内容を確認できません。申請の前に、院内での保全を済ませてください。
- 口コミの全文スクリーンショット(星の数、投稿者名、投稿時期が分かる形で)
- 口コミのURL(投稿をクリックして取得できるリンク)
- 気づいた日時と、院内で確認した内容のメモ
- 「来院記録がない」ことを主張する場合は、その根拠を院内で確認した記録(※カルテそのものをGoogleへ提出するものではありません。あくまで院内の確認メモとして)
また、院内で「本当に心当たりがないか」の確認は済ませてください。記憶違いで実在の患者さんだった場合、削除申請自体は問題ありませんが、その後の対応(返信や直接連絡)の判断を誤ります。
削除申請の手順
報告の経路は大きく2つあります。どちらから報告しても審査の仕組みは同じですが、ビジネスオーナーとして管理画面から報告するほうが、その後の状況確認まで行えます。
方法1: Googleビジネスプロフィール(管理画面)から報告する
- Googleビジネスプロフィールにログインし、対象の口コミを表示する
- 口コミのメニュー(︙)から「レビューを報告」等の報告導線を選ぶ(画面表記は時期により変わります)
- 違反の種類を選択し、送信する
報告後は、口コミの管理ツール(レビューの管理画面)で、申請した口コミの審査ステータスを確認できる場合があります。「審査中」「却下」などの状態が表示されるため、結果を待つ間の確認先として覚えておいてください。
方法2: Googleマップ上から第三者として報告する
管理画面にアクセスできない場合は、Googleマップで医院ページを開き、対象の口コミのメニューから「違反を報告」を選んでも報告できます。
審査にかかる時間と、結果の受け止め方
審査は数日で終わることもあれば、それ以上かかることもあります。明確な期限が公表されているわけではないため、「いつまでに消える」という見通しは立てないでください。結果は、削除されれば口コミが消え、却下されればそのまま残ります。通知の有無やステータスの反映にはタイムラグがあることもあります。
却下された場合: 再審査のリクエスト
ビジネスプロフィールの口コミ管理ツールでは、報告が却下された口コミについて、一度だけ再審査(異議申し立て)をリクエストできる仕組みがあります。再審査では、どのポリシーにどう違反しているのかを、より具体的に補足して提出することが重要です。初回の報告で選びきれなかった違反類型や、保全しておいた材料をもとに、説明を組み立て直してください。
それでも通らなければ、原則として、再審査請求は1回限りです。それ以上の定型的な申請経路はGoogleから公表されていません。次の節の対応に切り替えます。
申請で伝えること: 「困っている」ではなく「どの類型に当たるか」
報告の際、違反の種類を選ぶだけでなく、補足の説明を求められる場面があります。そのときに書くべきなのは、医院の困り感や反論ではありません。「その投稿が、どのポリシーの、どの類型に、どう当てはまるか」です。組み立ての例を示します(あくまで書き方の型であり、結果を左右するものではありません)。
- 来院形跡のない投稿について: 「投稿者は当院の患者ではなく、来院に基づかない虚偽のコンテンツに当たります。同期間に同様の文面の投稿が複数確認されています。」——真偽の主張だけでは弱くても、「虚偽のコンテンツ」という類型と、複数投稿という状況証拠を結びつけると、審査側が判断しやすくなります。
- 競合関係者と疑われる投稿について: 「投稿者は近隣の同業事業者の関係者であり、利益相反のあるコンテンツに当たります。」——根拠のない断定は避け、疑うに足る事情(アカウントの投稿傾向など、公開情報から分かる範囲)がある場合に限って使ってください。
- スタッフ個人への攻撃について: 「特定の従業員個人の氏名を挙げ、人格を攻撃する内容であり、嫌がらせ・いじめに当たります。来院体験への言及はありません。」——「来院体験と無関係である」点も、あわせて指摘する価値があります。
逆に、避けるべき書き方もあります。
- カルテの内容や来院記録の詳細を、証拠として文章に書き込まない(守秘義務の問題があります。Googleへの説明でも、患者情報を開示しない線は守ってください)
- 「名誉毀損だから削除せよ」といった法的主張を、プラットフォームへの報告の主軸にしない(Googleの審査はポリシー違反かどうかで判断されます。法的手続きは別の話として、専門家の領域です)
- 感情的な長文を書かない(審査は定型的に行われます。類型との対応関係が短く明確に書かれているほうが、判断されやすいと考えられます)
間違えやすいケースの見分け方
申請するかどうか判断に迷いやすいケースを、一般論として整理します。
- 別医院と間違えたと思われる口コミ: 医院名や治療内容が自院と合わない場合でも、それだけで「虚偽」と認定されるとは限りません。内容が来院体験と無関係であれば「無関係なコンテンツ」、明らかに虚偽の事実を述べていれば「虚偽のコンテンツ」の類型で報告する余地があります。まずは冷静な返信で「当院の情報と異なるようですが」と確認を促し、申請と併用する形が現実的です。
- 実在の患者さんだが、表現が過激な口コミ: 冒とく的表現や個人攻撃が含まれていれば、その部分については類型に当たる可能性があります。ただし、不満の内容自体は意見として残ることも多く、「表現の一部は違反だが、投稿全体は残る」といった結果もありえます。
- 元従業員による投稿: 利益相反の類型で報告できる可能性があります。在籍の事実などをGoogle側が確認できるわけではないため、結果は審査次第です。就業規則や競業の問題とは切り分けて考えてください。
- 星だけ・本文なしの低評価: 本文がない以上、ポリシー違反を指摘する材料がほぼありません。原則として削除は見込めず、返信で受け止める対応(本文なしでも短く返せます)が現実解です。
どのケースでも共通するのは、「申請は出せる。ただし認定はGoogle次第」という点です。見込みの薄いものに時間をかけすぎず、保全→報告→返信→通常運用、の順で手を打ち切るのが大切です。
削除申請と並行してやること: 返信は止めない
申請の結果を待つ間も、その口コミは検索した患者さんに見えています。削除申請と返信は、別の話として両方進めてください。
- 感情的な反論は書かない。 「そのような事実はありません」と公開の場で争う返信は、読んだ第三者に「言い合いをしている医院」という印象を残します。詳しくは別記事「医療広告ガイドラインと口コミ返信」の「患者情報への配慮」を参照してください。
- 短く、受け止める形で返す。 「ご意見をお寄せいただきありがとうございます。事実確認のうえ、今後の診療の参考にさせていただきます。詳しくお話を伺えればと思いますので、よろしければ当院までご連絡ください」程度に留めるのが安全です。
- 診療内容・来院の有無を公開の場で断定しない。 「あなたは当院に来院されていません」と書くこと自体が、医院側の持つ情報の開示になりかねません。
削除された場合は、返信も一緒に消えます。削除されなかった場合でも、冷静な返信がついているかどうかで、読んだ人の印象は大きく変わります。
Googleで消えない場合に残る選択肢
ポリシー違反に当たらず、Googleの審査でも削除されない口コミについては、プラットフォーム側での削除は難しいのが現実です。その場合の選択肢は、次の2方向です。
1. 口コミ全体で埋もれさせる(運用での対応)
1件の低評価は、口コミ全体の件数が増え、最近の返信が丁寧に回っている状態では、相対的に目立たなくなります。地道ですが、依頼導線の設計(別記事「口コミを増やす依頼の設計」参照)と返信運用の継続が、最も現実的な対抗手段です。「消す」ことに固執するより、「薄める」運用に切り替えたほうが、医院全体の印象は早く改善します。
2. 法的な手続きを検討する(専門家の領域)
投稿内容が名誉毀損や業務妨害に当たる可能性がある場合、裁判所を通じた削除請求や、発信者情報開示請求といった法的手続きの選択肢は存在します。ただし、これらは要件の判断や証拠の整理が必要で、医院が独力で進める領域ではありません。「実在しない人物による組織的な攻撃が続いている」「虚偽の事実で具体的な被害が出ている」といった深刻なケースでは、早めに弁護士へ相談してください。本記事では手続きの詳細には踏み込みません。
やってはいけないこと
焦るほど手を出しがちですが、次は確実に避けてください。
- 好意的な口コミを買う・自作自演する。 削除対策として行う事業者もいますが、ポリシー違反であり、発覚すれば医院の信頼を根本から失います。
- 「口コミを消します」とうたう外部サービスに安易に依頼する。 削除の可否を決めるのはGoogleだけであり、削除を保証できる事業者は存在しません。手法が規約違反のサービスを使えば、医院側がリスクを負います。
- 投稿者に直接、削除を迫る。 特定できた場合でも、削除と引き換えの利益供与や圧力はトラブルの元です。連絡を取る場合も、事実確認と謝意・改善の範囲に留め、判断は専門家に相談してからにしてください。
- 同じ口コミを何度も繰り返し報告する。 再審査請求は原則1回限りです。繰り返しの報告は審査を早めません。
まとめ
- 削除の判断基準は「真偽」ではなく「Googleのポリシー違反かどうか」
- 報告価値があるのは、スパム・虚偽、利益相反、なりすまし、冒とく的表現、個人攻撃、個人情報、無関係な内容などの類型
- 申請前にスクリーンショットとURLで証拠を保全する
- 管理画面から報告し、ステータスを確認。却下されたら一度だけ再審査をリクエストできる
- 申請中も返信は止めない。公開の場で争わない
- 消えない場合は「薄める運用」へ。深刻なケースは弁護士へ相談
削除申請は「やるべきときに、正しい類型で一度出す」ものと捉え、医院の日常のエネルギーは返信と依頼の運用に戻すのが、結果として最も早く印象を立て直す道です。
シカデスクは、歯科医院専門のフロントデスク運用代行です。口コミ対応では、届いた口コミへの返信運用(医院のトーンを言語化した「医院トーン辞書」にもとづく下書き・承認・公開)を担います。下書きづくりにはAIも使いますが、患者さんとの直接の接点と、公開前の判断は人間が担う——というのが私たちの原則です。なお、削除申請のような個別判断が関わる対応は、医院・専門家と連携して進める前提で運用を設計します。
「うちの医院の口コミ、今どうなっているんだろう」という方には、公開情報だけで作る無料診断があります。口コミの件数・評価・未返信の状況を数字でまとめます。患者さんの個人情報は一切不要です。
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