口コミ返信にかかる時間を数える
月あたりの工数の見方
「口コミの返信なんて、1件数分でしょ」——院長先生からよく聞く感覚です。実際、1件だけ見ればその通りかもしれません。ただ、口コミ対応にかかる時間は、返信文を書く時間だけではありません。気づく、読む、事実を確認する、下書きを直す、承認する。その積み重ねが、月に何時間になっているか。感覚ではなく数字で見ると、担当の置き方も、外に任せるかどうかの判断も、ずいぶん変わってきます。
この記事では、口コミ返信の工数を「1件あたりの時間 × 月の件数」で数える方法を整理します。大げさな分析は要りません。1週間だけ実測すれば、自院の数字が見えてきます。
まず「1件あたり」を分解する
口コミ返信の作業は、1件ごとに小さな工程の集まりです。分解すると、だいたい次のようになります。
- 気づく・開く——通知や一覧で新しい口コミを確認する
- 読む・内容を把握する——星の数と本文を読み、何への評価かを掴む
- 事実確認をする——低評価や具体的な指摘がある場合、来院経緯を院内で確認する
- 下書きを書く——型に沿って文面を作る。具体を1つ拾う作業を含む
- 承認を通す——低評価は院長(承認者)が読み、必要なら修正する
- 公開する・記録する——返信を投稿し、対応済みとして管理する
高評価への返信なら、3を省いて数分で終わることもあります。一方、低評価は事実確認と承認で時間が伸びます。つまり「1件あたり」は評価によって幅がある、というのが実態です。だからこそ、平均を感覚で決めず、実測します。
実測のしかた: 1週間だけ、ざっくり測る
正確なタイムスタディは要りません。続かないからです。おすすめは次のやり方です。
- 期間は1週間。 その週に来た口コミすべてを対象にします(週の件数が少ない医院は2週間でも可)。
- 測るのは工程4と5を中心に、全体の体感でOK。 スマホのタイマーで「返信作業の開始から公開まで」を測り、件数で割ります。低評価が混ざった週なら、それも含めた平均が「自院の平均」です。
- 低評価対応は別枠でメモする。 事実確認や院内共有に使った時間は、返信作業とは別に「◯分」と残しておくと、後で効いてきます。
ポイントは、精密さより「自院の数字であること」です。他院の事例や一般的な目安は、そのまま自院には当てはまりません。
実測の記録は、次のような簡単なシートで十分です。
| 日付 | 件数 | うち低評価 | 返信作業の合計時間 | 低評価の確認・共有にかかった時間 |
|---|---|---|---|---|
| (記入例)◯月◯日 | 3件 | 1件 | 25分 | 15分 |
1日単位でこの行を足していくだけです。1週間分たまれば、「1件あたりの平均時間」と「低評価1件あたりの追加時間」の2つが、自院の実数として出てきます。記録する人が面倒に感じるようなら、時間は5分単位の概数で構いません。続くことの方が大事です。
もう一つ、実測する週の選び方にも注意してください。口コミが1件も来ない週に測っても分母がゼロになります。新患の案内に力を入れた直後や、季節の変わり目など、来院が増える時期は口コミも増えがちです。普段の週で測るのが基本ですが、「多い週ではどれくらいになるか」も見ておくと、繁忙期の体制を考えるときに役立ちます。
月の工数に直す計算式
実測できたら、あとは掛け算です。
月の返信工数 ≒(月の新規口コミ件数)×(1件あたりの平均時間)+(低評価対応の追加時間)
参考に、仮の数字で試算してみます(あくまで計算の形を示す例です)。
- 例1: 1件あたり平均8分、月に10件の口コミ → 返信作業だけで月80分。低評価の事実確認が月に2件、各20分なら、合計で月2時間ほど。
- 例2: 1件あたり平均12分、月に20件 → 月4時間。低評価対応を加えると、月5時間前後になることもあります。
月2時間と聞くと小さく見えますが、これは「受付の誰かが、診療の合間に途切れ途切れでこなしている2時間」です。作業の切り替えコストまで含めると、体感の負担は数字以上になります。また、この試算にはたまった未返信の一掃は含まれていません。未返信が何十件とある医院では、初期の「一掃」だけでもまとまった時間が必要です。それは日常の工数とは別に見積もってください。
なお、月の件数を知るには、自院の口コミ件数と未返信件数を数えるところから始めます。手順は別記事「自院の未返信件数を数える」でまとめています。
工数を「円」に換算するときの注意
工数を人件費に換算して見たい場合もあるでしょう。そのときは、担当者の時給(社会保険料等を含む実質的な時間単価)で掛けるのが基本です。院長の承認時間は、院長の時間単価がはるかに高いので、スタッフの作業時間とは分けて換算してください。混ぜて平均すると、実態が見えなくなります。
ただし、換算した金額を「口コミ対応で月に◯円損している」という言い方には注意してください。口コミ対応は、医院の印象を守り、指摘を改善につなげるための業務です。ゼロにすべきコストではなく、「適正な体制で回せているか」を見るための数字です。金額は、あくまで体制を判断するための物差しの一つに留めてください。
数字が見えると、何が判断できるか
工数を数える目的は、管理を厳しくすることではありません。次の3つの判断材料にするためです。
1. 担当の置き方
月に1時間未満なら、現体制の片手間でも回るかもしれません。月に数時間、低評価対応の突発性まで含めると、「誰が・いつやるか」を決めない限り、未返信がじわじわ増える構造になります。工数は、担当と期限を決める議論(別記事「Google口コミへの返信、誰が・いつまでに回すか」)の出発点です。
2. 院長の時間の使い方
低評価の承認は院長が担う医院が多いはずです。その承認に月どれだけ使っているかが見えると、「院長が診療の合間に読む」形が持続可能か、下書きの質を上げて承認を軽くすべきか、といった改善の方向が見えます。院長の数十分は、受付スタッフの数十分とは重みが違います。分けて見る価値があります。
3. 外に任せるかどうかの物差し
返信の下書き作成などを外部に任せる場合、その費用対効果は「自院の工数 × 時間単価」と比べないと判断できません。工数が見えていないと、代行の月額が高いか安いかも分かりません。逆に、工数が小さい医院では、無理に外注せず院内で型を作る方が合っていることもあります。数字は、どちらに転ぶにも必要な材料です。
内訳を見ると「どこで詰まっているか」が分かる
合計の工数だけでなく、工程ごとの内訳を見ると、医院ごとに詰まりどころが違うことが分かります。代表的なパターンは次の3つです。
- 下書きに時間がかかっている型。 毎回、文面を白紙から考えている医院に多いパターンです。型とトーンの言語化で最も効くタイプです。
- 承認で止まっている型。 下書きはできているのに、院長の確認が診療の合間に埋もれて数日寝てしまうパターン。この場合、1件あたりの作業時間は短くても「滞留日数」が長くなります。工数(分)とは別に、投稿から公開までの日数も見てみてください。承認のタイミングを決まった時刻に寄せるだけで改善することがあります。
- 事実確認に時間がかかっている型。 低評価のたびに、関係者への聞き取りがゼロから始まるパターンです。共有と記録の型(低評価がついた直後の初動フロー)を決めておくと、確認そのものの時間が短くなります。
自院がどの型か分かると、対策の順番を間違えません。型を用意しても承認で止まっている医院では効果が出ず、承認の仕組みを直しても下書きが毎回ゼロからでは総量は減りません。工数を数える本当の価値は、この「詰まりどころの特定」にあります。
工数を減らす工夫(ただし、雑にしない)
数えたうえで「多い」と分かったら、削れる部分と削れない部分を分けます。
- 削れる部分: 毎回ゼロから文面を考える時間(評価帯別・場面別の型を用意する)、トーンの迷い(医院の言葉づかいを「医院トーン辞書」のような形で言語化しておく)、承認の往復(下書きの水準を揃え、修正の往復を減らす)
- 削れない部分: 低評価の事実確認、口コミの具体に触れる一手間、公開前の人の目での確認
早く返すこと自体が目的になると、どの口コミにも同じ文面が並ぶ「テンプレの使い回し」になります。患者さんは敏感で、それは伝わります。工数の削減は、判断と確認の工程ではなく、準備と型の工程で進めるのが安全です。
未返信がたまっている医院は「初期工数」を分けて見積もる
日常の工数とは別に、過去の未返信が大量に残っている医院には「一掃」の初期工数があります。数十件規模になると、1件あたりの時間が日常分と同じでも、合計は半日〜数日分の作業になります。しかも古い口コミは来院経緯の確認が難しく、1件あたりの判断に時間がかかることもあります。
見積もる際は、次の3つに分けてください。
- 低評価の未返信——院長確認が必要で、最も時間が読めない部分
- 本文ありの高評価——具体を拾う作業がある分、1件の時間は中程度
- 星だけ・短文の口コミ——短い受け止めで返せるため、まとめ処理が効く部分
この分類で件数を数え、実測した「1件あたり」を掛ければ、一掃に必要な総量の見当がつきます。「全部は無理でも、低評価と直近分だけ先に」という線引きも、この見積もりがあって初めて現実的に決められます。
工数が「多い」と分かったあとの選択肢
数字を見て「思ったより多い」となった場合、選択肢は大きく3つです。
- 院内で型を作って続ける。 例文の型、トーンの言語化、承認フローの固定で、1件あたりを下げていく道です。件数が少ない医院では、これが最も合います。
- 院内の分担を見直す。 下書きは受付、承認は院長、といった分業と、担当・期限の固定で「誰かの片手間」をやめる道です。工数の総量は同じでも、突発的な滞留が減ります。
- 下書き作成などの裏側を外部に任せる。 医院側に残るのは承認と公開の判断だけにし、1件あたりの院内時間を圧縮する道です。件数が多い、あるいは未返信の一掃が必要な医院で検討の俎上に載ります。
どの道を選ぶにしても、出発点は「自院の工数が見えていること」です。見えていない状態では、現状維持が正しいのかも判断できません。
負担感と数字がズレるとき
実測してみると、「思っていたより少なかった」という結果になることも珍しくありません。それでも担当者の負担感が強い場合、理由は時間の長さとは別のところにあります。
- 中断のコスト。 返信作業は、会計や電話対応の合間に割り込む形になりがちです。10分の作業でも、その前後で本来の業務への集中が切れる分、体感は10分では済みません。
- 低評価の心理的な重さ。 低評価を読む・関係者に確認するという工程には、時間では測れない消耗があります。月に数件でも、負担感の中心はここにあることが多いものです。
- 「いつ終わるか分からない」感覚。 担当と期限が決まっていない業務は、終わりの見えない分だけ重く感じます。
つまり工数を数えることは、負担の正体が「量」なのか「割り込み方」なのか「心理的な重さ」なのかを切り分ける作業でもあります。量が問題なら型や外注が効きますが、割り込み方が問題なら「返信作業は◯曜の午後にまとめてやる」といった時間の置き方で軽くなります。数字と負担感の両方を見ることが、対策を外さないコツです。
数え方の注意点
- 件数は月でならす。 口コミは月によって波があります。1ヶ月だけ見て結論を出さず、3ヶ月程度の平均で見ると安定します。
- 「書く時間」だけ数えない。 気づく・確認する・承認する、まで含めて1件です。ここを省くと、実態の半分も見えません。
- 比較のための数字にしない。 この工数は、担当者を評価するための数字ではありません。体制の判断材料です。その位置づけを院内で共有しておくと、実測にも協力してもらいやすくなります。
- 担当が複数いる場合は、合算で見る。 受付が下書き、院長が承認、といった分業では、関係者全員の時間の合計が「1件あたり」です。一人分だけ数えると過小評価になります。逆に、誰の時間がどれだけ使われているかの内訳も分かるので、分担の見直しにはそのまま使えます。
- 数字は院外に出すものではない。 自院の工数は内部の判断材料です。他院と比較したり、公表したりするための数字ではありません。自院の先月・今月との比較に使うのが正しい使い方です。
まとめ
- 口コミ返信の工数は「読む・確認・下書き・承認・公開」の合計。1件の感覚と、月あたりの実態は違う
- 測り方は、1週間だけ実測して月件数を掛ける、それで十分
- 数字が見えると、担当の置き方、院長の時間、外に任せるかの判断ができるようになる
- 削るのは準備と型の工程。事実確認と人の目の確認は削らない
シカデスクは、歯科医院専門のフロントデスク運用代行です。口コミ返信では、下書きの作成(医院のトーンを言語化した「医院トーン辞書」にもとづく)から承認・公開までの運用を担います。下書きづくりにはAIも使いますが、公開前の判断と患者さんとの直接の接点は人間が担う——というのが私たちの原則です。
「そもそも、うちの口コミ対応にどれくらい時間を使っているか分からない」という方には、公開情報だけで作る無料診断があります。口コミの件数・評価・未返信の状況を数字でまとめます。患者さんの個人情報は一切不要です。
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