呼び戻し対象リストの作り方
最終来院日での線引きと除外ルール
定期検診の呼び戻しは、文面よりも先に「誰に送るか」で成否が決まります。対象の線引きが甘いと、治療中の方に「お久しぶりです」という案内が届くような事故が起き、逆に絞りすぎると、戻ってくるはずの方に声が届きません。
この記事では、最終来院日を基準にした対象リストの作り方と、必ず外すべき人の除外ルールを、手順の形で整理します。レセコンの機種ごとの操作ではなく、どの医院でも使える「考え方とチェック項目」です。
対象リストの基本形: 最終来院日で切る
出発点はシンプルです。全患者さんを「最終来院日」で並べ、一定期間が空いた方を対象候補にします。 文例集(資料DL「リコール SMS / LINE 文例集」)と同じく、次の3区分が基本形です。
| 区分 | 最終来院からの期間 | 位置づけ |
|---|---|---|
| A | 3〜6ヶ月 | 定期検診の時期が来た方への通常の案内 |
| B | 6〜12ヶ月 | 間が空いてしまった方への案内 |
| C | 12ヶ月以上 | 久しぶりの方へ。文面はやわらかく、送る回数も絞る |
この時点ではまだ「候補」です。ここから除外ルールで削っていくのがリスト作りの本体です。最初から1つの完成リストを作ろうとせず、「候補を広く出して、理由のある人を外していく」順番で進めると、漏れも事故も減ります。
なお、最終来院日の「来院」には、治療の来院だけでなく検診・クリーニングの来院も含めて数えます。どこまでを「来院」とみなすかは医院内で定義を統一してください(例: 電話相談のみの方は含めない、など)。
抽出のときに見る項目(実務メモ)
レセコンや予約システムから候補を出すとき、最低限そろっていると作業が進む項目は次のとおりです。機種によって項目名は異なりますが、「出すときに一緒に確認する情報」として参考にしてください。
| 項目 | 何のために見るか |
|---|---|
| 氏名・患者番号 | 本人特定と、送信・反応の記録のため |
| 最終来院日 | 区分(A・B・C)を決める基準 |
| 次回予約の有無 | 予約済みの方を除外するため |
| 治療の進行状況(治療中かどうか) | 治療中の方を除外するため |
| 携帯電話番号 | SMS送信の可否を判断するため |
| LINE登録の有無 | LINE送信の可否を判断するため |
| 住所 | はがき送付の可否と宛名のため |
| 案内に関する申し出の記録 | 連絡を希望されていない方を除外するため |
抽出のたびにこの項目セットで出すと、担当者が変わってもリストの質がぶれません。「前回は入っていた項目が今回は抜けていて、除外できなかった」という事故は、抽出条件をメモとして残しておくだけでかなり防げます。条件メモは、リストのファイルと同じ場所に置くのがおすすめです。
線引きを決めるときの3つの観点
1. 医院の検診間隔の考え方に合わせる
区分の境界(何ヶ月からを対象にするか)は、医院が患者さんに案内している検診間隔と揃えます。3ヶ月ごとのメンテナンスを案内している患者さんが多い医院なら、Aの範囲は「前回の案内時期を過ぎた方」が中心になります。一律の正解はないので、院長が決めた間隔の考え方を、まずリストの条件に落とし込みます。
2. 媒体が届くかどうかで分ける
候補が出たら、連絡手段ごとに振り分けます。
- 携帯番号がある方 → SMS(またはLINE)
- LINE公式アカウントの友だち登録がある方 → LINE
- 住所のみの方 → はがき
- 連絡先がどれも古い・不明な方 → 今回は送らず、「連絡先の更新が必要な方」として別に記録
「送れない方」をリストから消して終わりにせず、別枠で残しておくと、再来院の機会に連絡先を確認する、といった次の一手につながります。
3. 一度に送る量を決める
対象が多い月は、あえて群を分けて時期をずらして送ります(波状送信)。予約が一時期に集中して受付が回らなくなるのを避けるためと、送った群とまだ送っていない群を比べて反応の違いを見るためです。まずは月あたりの処理可能量(受付が対応できる予約増の上限)を院長と確認してから、通数を決めてください。
線引きの具体例: 境界はどう置くか
区分の境界(何ヶ月からを対象にするか)の置き方に、迷う方が多いところです。考え方の例を2つ挙げます。
- メンテナンス中心の医院(3〜4ヶ月間隔の検診を案内している): Aは「前回の検診予定月を過ぎた方」が中心になります。最終来院から3〜5ヶ月程度をA、6〜11ヶ月をB、12ヶ月以上をCと置くと、医院の案内リズムとずれません。
- 検診間隔にばらつきがある医院(患者さんごとに間隔が違う): 一律の月数で切るより、「患者さんごとに決まっている次回検診の目安時期を過ぎた方」をAにするほうが実態に合います。レセコンに次回の目安が記録されていない場合は、最終来院日での一律カット(例: 6ヶ月/12ヶ月)で代用し、運用しながら記録の整備を進める形でも構いません。
どちらの場合も、大事なのは境界の数字そのものよりも、「なぜその境界なのか」を院内で説明できることです。受付が迷ったときに立ち返れる基準があると、担当者が変わってもリストの質が保てます。境界を変えたときは、変更日と理由を条件メモに追記しておくと、後から「戻り方が変わったのは境界を変えたからか」が検証できます。
除外ルール: この方々は必ず外す
ここがリスト作りで最も大事な部分です。次の条件に当てはまる方は、区分にかかわらず対象から外します。
絶対に外す
- 治療中の方(次回予約の有無にかかわらず、治療計画が進行中の方)
- 来院予約がすでに入っている方
- 連絡を希望されていない方(配信停止の申し出があった方、案内不要と伝えられている方)
- 転居・転院が判明している方(戻ってきたはがきや本人の申告で分かっている場合)
- お亡くなりになったことが分かっている方、およびご家族から連絡があった方
- 医院都合でお断りした経緯がある方など、医院として連絡すべきでないと判断された方
院長(または承認者)の確認に回す
機械的に外すのではなく、送るかどうかを院長が判断する枠を作っておくと安全です。
- 治療を中断した理由がはっきりしない方(体調・金銭・不満など、理由によって文面も可否も変わります)
- 過去にクレームや行き違いがあった方
- 未収金など、事務的な懸案が残っている方
- 矯正・インプラントなど、長期の治療や経過観察の途中で間隔が空いている方(「間が空いている」ことが前提の治療もあります)
迷ったら送らない、ではなく「確認枠に入れて院長が見る」が基本です。最終的にリストを承認するのは院長(または承認者)という運用にしておくと、事故の責任範囲も明確になります。
重複と世帯の扱い
- 同一人物の二重登録(旧姓・表記ゆれ)は、送信前に名寄せして1件にまとめます。二重に届くのは印象が悪く、コストも無駄です。
- ご家族で通われている医院では、世帯で複数名が対象になることがあります。別々に送るのが原則ですが、はがきの場合は同居のご家族分が同日に何通も届く形にならないか、一度目を通すと丁寧です。
リストを整える手順(まとめ)
- レセコンから最終来院日で候補を抽出する(区分A・B・Cに分ける)
- 除外ルールを適用する(治療中・予約済み・連絡不可などを外し、迷う方は確認枠へ)
- 連絡手段で振り分ける(SMS / LINE / はがき / 送れない方)
- 院長(または承認者)がリストと文面を最終確認する
- 送信する(群を分ける場合は、どの群にいつ送ったかを記録する)
- 送信日・送信区分を記録し、次回の抽出で二重に送らないようにする
送信前の最終チェックリスト
送信ボタンを押す前(はがきなら印刷・投函の前)に、次の項目を声に出して確認する運用にすると、事故の多くは防げます。
- リストは今月作り直したものか(古いリストの使い回しではないか)
- 治療中の方は全員外れているか
- 来院予約が入っている方は外れているか
- 連絡を希望されていない方・配信停止の方は外れているか
- 転居・転院・お亡くなりの情報が反映されているか
- 院長の確認枠に入れた方について、判断結果が反映されているか
- 重複(同一人物の二重登録)は解消されているか
- 文面の区分(A・B・C)と対象の区分は一致しているか
- 送信日時・送信区分を記録する準備ができているか
- 院長(または承認者)の最終確認を通っているか
このチェックは、確認した人の名前と日付を残す形にしておくと、「誰が・いつ確認したか」が後からたどれます。
リストの鮮度を保つ
対象リストは作って終わりではありません。
- 月次で作り直すのが基本です。 数ヶ月前のリストを使い回すと、その間に予約を入れた方や治療を再開した方が混ざり、事故のもとになります。
- 戻ってきたはがき・届かなかった連絡は、元データに反映します。 宛先不明の記録が溜まると、次回以降の無駄な送信が減ります。
- 反応の記録を残します。 「誰に・いつ・何を送り、その後来院があったか」を残しておくと、月末に送信リストと来院リストを突き合わせて「戻った人数」を数えられます。因果関係を断定するためではなく、事実を積み上げるための記録です。
- 個人情報の置き場所を決めます。 患者さんのリストは医院の管理のもとで扱い、持ち出しや個人端末での保管はしません。外部のサービスを使う場合も、どの情報がどこに渡るのかを先に確認してください。
送信記録に残す項目
「戻った人数」を数えるためには、送信の記録が要ります。記録の形式は表計算ソフトで十分です。最低限、次の項目を残してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 送信日 | 実際に送った日 |
| 対象者 | 患者番号(氏名でもよいが、番号の方が安全) |
| 区分 | A(3〜6ヶ月)/B(6〜12ヶ月)/C(12ヶ月以上) |
| 媒体 | SMS / LINE / はがき |
| 文面の種別 | 初回 / 再送 など |
| 結果 | 予約が入った・来院した・反応なし・宛先不明 など(月末に記入) |
この記録と来院リストを突き合わせると、「案内のあとに来院した人数」が事実として数えられます。来院の理由を断定するためのものではなく、次回のリスト作り(どの区分・どの媒体に力を入れるか)の判断材料です。記録が習慣になると、数ヶ月後には医院ごとの「戻りやすい層」が見えてきます。
よくある失敗
- 除外を文面の工夫でごまかす: 「治療中の方にも当たり障りのない文面にすれば大丈夫」という考え方は危険です。問題は文面ではなく、送る相手の選び方です。
- 最初の抽出条件が広すぎる: 全患者さんに一斉に送ると、受付の電話・予約対応が追いつかなくなります。区分ごとに、間隔を空けて送るのが安全です。
- 誰が承認したか分からないまま送る: リストと文面は、必ず承認を通してから送信します。後から「なぜこの人に送ったのか」を説明できる状態にしておくことが、医院を守ります。
- 確認枠が形だけになる: 迷う方を院長の確認枠に入れても、確認のタイミングが決まっていないと、結局そのまま送られたり、永遠に保留になったりします。確認枠の方は「今週の送信前までに院長が見る」のように、確認の期限を決めておくことが大切です。保留が続く方については、一定期間が過ぎたら対象から外す、という出口もあわせて決めておくと、リストに古い判断待ちが溜まりません。
担当者が変わっても質を保つために
リスト作りは、属人化しやすい業務です。「いつもの人」が休むと抽出の条件が分からなくなる、という医院は少なくありません。対策は難しくなく、次の3点を紙かファイルに残しておくだけです。
- 抽出の条件(区分の境界、除外の条件、レセコンの操作手順の要点)
- 判断に迷ったケースと、そのときの院長の判断(例: 「経過観察中の方は確認枠へ」)
- 送信記録と、戻ってきたはがき等の反映ルール
これらは立派なマニュアルである必要はなく、箇条書きのメモで十分です。むしろ、実際に起きたケースと判断を追記していく「生きたメモ」のほうが、現場では役に立ちます。呼び戻しの運用が特定の担当者の記憶の中にだけある状態から、医院の仕組みとして残る状態に移すことが、長く続けるための土台になります。
まとめ
- 対象リストは「最終来院日で候補を出し、除外ルールで削る」の順番で作る
- 区分は3〜6ヶ月/6〜12ヶ月/12ヶ月以上が基本形。境界は医院の検診間隔の考え方に合わせる
- 治療中・予約済み・連絡を希望されていない方は、理由を問わず必ず外す。迷う方は院長の確認枠へ
- リストは月次で作り直し、送信と反応の記録を残す。それが「戻った人数」を数える土台になる
シカデスクは、歯科医院専門のフロントデスク運用代行です。定期検診の呼び戻しでは、対象の抽出・文面の作成・送信・「戻った予約と来院を数えての報告」までを、すべて医院の承認制で運用します。文面の下書きはAIも使いますが、患者さんとの直接の接点は人間が担う、というのが私たちの原則です。対象リストの作り方に迷う医院向けに、抽出と除外の設計からお手伝いしています。
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