予約の電話とWeb予約、比率を測って分かること
「うちは電話予約が多いのか、Web予約が多いのか」と聞かれて、感覚ではなく数字で答えられる医院は、それほど多くありません。予約システムを入れていても、チャネル別の内訳まで毎月見ているケースは意外と少ないものです。
この記事では、予約の入口(電話・Web・LINE・来院時の次回予約など)ごとの件数と比率を数える意味、数え方、そして比率から何が読めるのかを整理します。比率そのものに「正解」はありません。大事なのは、自院の数字を同じ方法で数え続け、変化に気づける状態を作ることです。
まず、チャネルをどう分けるか
数え始める前に、予約の入口の定義を医院の中でそろえます。分け方の例は次の通りです。
| チャネル | 数えるもの |
|---|---|
| 電話 | 患者さんからの電話で確定した予約 |
| Web予約 | 予約システム・医院サイトのフォームから入った予約 |
| LINE | LINE公式アカウント経由の予約・問い合わせからの予約 |
| 来院時の次回予約 | 診療の帰りに受付で取った次回予約 |
| その他 | 紹介状経由、窓口への直接来院など |
医院によって使っている入口は違うので、この表はあくまで出発点です。自院にないチャネルは削り、あるものは足してください。大事なのは、一度決めた分け方を変えないことです。途中で定義を変えると、前月との比較ができなくなります。
もうひとつ、新患と再診は分けて数えることをおすすめします。入口の使われ方は、新患と再診で大きく違うからです。再診の多くは「来院時の次回予約」で入る一方、新患は電話とWebが中心になる医院が多いはずです。新患と再診を混ぜてしまうと、「Web予約が増えた」のか「再診の次回予約が増えただけ」なのかが分からなくなります。
数え方の実務
数え方は、医院の環境によって3通りあります。
1. 予約システムの集計機能を使う
Web予約システムや予約管理ソフトには、予約経路別の集計ができるものがあります。まずは自院のシステムにその機能がないか確認してください。あれば、月次で書き出すだけで済みます。
2. 受付で1項目だけ記録する
電話予約については、システムに入力する際に「電話」という区分を残す運用にします。予約を受けた人がチェックを1つ入れるだけにしておくことが続けるコツです。項目を増やしすぎると、忙しい時間帯に記録が漏れ、数字が実態から離れていきます。
3. 月末に台帳から拾う
システムで区分が残せない場合は、月末に予約台帳やカルテの予約欄から拾う方法もあります。ただしこれは手間がかかるので、毎月ではなく「四半期に1回、1ヶ月分だけ数える」といった割り切りも現実的です。
どの方法でも、数える期間は月単位にそろえるのが基本です。週単位だと曜日や祝日の影響でぶれが大きく、変化なのかノイズなのか判断しづらくなります。
比率から読めること
比率が見えるようになると、次のようなことが読み取れるようになります。
電話比率が高い医院で起きていること
電話予約の比率が高い医院では、受付の業務が「電話対応」に引っ張られやすくなります。電話は診療時間内に集中し、しかも会計や来院対応と同時に出ます。電話比率の高さは、そのまま受付の同時処理の負荷の高さを示します。
また、電話でしか予約できない状態は、診療時間外に予約したい患者さんを取りこぼしている可能性も示します。これは数字だけでは断定できませんが、「Web予約の導線を整えたら、時間外の予約がどれだけ入るか」を試す根拠にはなります。
Web比率の変化は「入口の変化」を映す
Web予約の比率が上がったとき、それは予約の総数が増えたこととは別の話です。電話で入っていた予約がWebに移っただけかもしれませんし、新しい患者さんがWebから入るようになったのかもしれません。新患・再診を分けて数えていれば、この切り分けができます。
逆に、Web予約を始めたのに比率がほとんど動かない場合は、導線の問題であることが多いものです。医院サイトに予約ボタンが見つけにくい、Googleのプロフィールから予約ページに辿り着けない、といった「入口の置き場所」の問題です。比率は、こうした改善の前後を比べる物差しになります。
来院時の次回予約の比率は「再診の土台」を映す
再診の中で「来院時に次回予約を取って帰る方」の比率は、定期検診の継続の土台です。この比率が低い医院では、来院が途切れた方へ後から連絡する「呼び戻し」の対象が多くなります。逆に、帰りに次回を取れる医院ほど、呼び戻しに頼らなくて済む構造になっています。
次回予約の比率は、会計の順序や受付の声かけといった日々の運用の積み重ねで変わります。月次で数えておくと、運用を変えた効果があったのかどうかを、感覚ではなく推移で見られます。
比率だけでは分からないこと
比率は入口の分布を示すだけで、予約の「質」までは分かりません。余裕があれば、次の数字も合わせて見てください。
- 来院率: そのチャネルで入った予約が、実際に来院につながった割合。Web予約は手軽な分、当日のキャンセルや無断キャンセルとどう関係するかは、医院によって異なります。自院の数字で確認してください。
- キャンセルの出方: 前日・当日に動く予約がどのチャネルに多いか。埋め直しの連絡(キャンセル待ちへの案内)の運用を考える材料になります。
- 時間外の予約時刻: Web予約が何時に入っているか。夜間・早朝に一定数入っているなら、電話では拾えなかった需要がそこにあります。
いずれも「だから売上がこうなる」と結論づけるための数字ではありません。受付の人員配置や導線の改善といった、次の一手を決めるための材料です。
月次集計表のフォーマット例
数字は、毎月同じ形の表に落とすと比べやすくなります。下記は集計表のフォーマット例です(数値は形式を示すための例で、特定の医院の実績ではありません)。
| チャネル | 新患 | 再診 | 合計 | 比率 |
|---|---|---|---|---|
| 電話 | 18 | 42 | 60 | 30% |
| Web予約 | 22 | 8 | 30 | 15% |
| LINE | 3 | 4 | 7 | 4% |
| 来院時の次回予約 | 0 | 95 | 95 | 48% |
| その他 | 2 | 6 | 8 | 4% |
| 合計 | 45 | 155 | 200 | 100% |
この形にしておくと、「新患の入口はWebと電話がほぼ半々」「再診は来院時の次回予約が土台」という構造が一目で分かります。見るべきは単月の絶対値ではなく、先月・先々月と並べたときの比率の動きです。
なお、集計の手間を考えると、最初からこの粒度でなくても構いません。まずは「電話/Web/来院時の次回予約/その他」の4区分・新患再診の区別なし、から始めて、運用が定着したら分けて数える、という段階的な始め方でも十分です。続かない精密さより、続く大まかさのほうが、判断材料としては価値があります。
「入口を増やす・減らす」の判断にも使える
チャネル別の数字は、予約の入口そのものを見直すときの材料にもなります。
たとえば、LINE経由の予約が月数件しかない医院では、LINEの予約導線に手間をかけるより、電話とWebの改善に集中したほうが合理的かもしれません。逆に、Web予約が新患の半分近くを占めるようになってきたら、医院サイトやGoogleプロフィール上の予約導線は「医院の入口そのもの」として扱う価値があります。
また、電話比率が高い医院がWeb予約を導入する場合も、導入前に電話の件数を数えておくと、導入後に「電話がどれだけ減ったか/減らなかったか」を検証できます。検証できないと、導入の成否が担当者の印象で決まってしまいます。
よくある疑問
Web予約システムを入れていない医院は、数える意味がない?
あります。Webがない医院でも、「電話」と「来院時の次回予約」の2区分を数えるだけで、受付の負荷の構造と再診の土台の強さは見えてきます。さらに、問診票や初診時のアンケートで「何を見て来院したか」を1項目聞いておくと、電話予約の中身(Google検索から電話したのか、紹介なのか)の大まかな内訳も掴めます。
比率が悪いと、何が問題なのか?
比率自体に良い・悪いはありません。電話比率が高いこと自体は、地域の高齢の患者さんが多い医院では自然な姿です。問題になるのは、比率と医院の体制が合っていないときです。たとえば電話比率が高いのに受付が1名体制で会計と重なって取りこぼしているとか、Web導線に力を入れているのに比率が動いていないとか。数字は、そうした「ずれ」を見つけるために使います。
担当が変わると数字が途切れてしまわないか?
月次の集計は「誰がやっても同じ数字になる」形にしておくことが大事です。区分の定義と数え方を1枚のメモに残し、集計表のフォーマットも固定しておけば、担当が交代しても推移は途切れません。逆に、数え方が担当者の頭の中にしかない状態だと、異動や退職のたびに数字の連続性が失われます。集計の型そのものを医院の資産として残す意識で、最初から文書化しておくことをおすすめします。
数え始めるのに、システムの改修は必要?
多くの場合は不要です。予約を受けた際に区分をメモする運用から始められます。システムの集計機能は、運用が定着してからで十分です。最初から仕組みを作り込むより、まず1ヶ月分を数えてみて、医院にとって意味のある区分が見えてから整えるほうが、遠回りに見えて確実です。
数字をどう使うか
比率を見て最初に効くのは、受付体制の判断です。たとえば電話比率が高く、特定の時間帯に集中しているなら、その時間帯だけ電話対応の分担を見直す根拠になります。Web比率を上げたいなら、まず入口の導線(Googleプロフィール、医院サイト、LINEのメニュー)を点検する、という順番が見えてきます。
逆に、数字がない状態では「電話が多い気がする」「Webは少ない気がする」という印象で判断することになり、対策の優先順位が人によってぶれます。月1回、同じ表を更新するだけで、院内の会話が「気がする」から「先月と比べて」に変わります。
なお、広告やキャンペーンを行った月は比率が一時的に動きます。単月の変化で一喜一憂せず、3ヶ月程度の推移で見ることをおすすめします。
もうひとつ、数字は受付スタッフの評価に使わないでください。チャネル比率は医院の構造を示す数字であって、誰かの働きぶりを測る数字ではありません。「電話の取りこぼしを減らそう」という話と「なぜ取りこぼしたのか」という個人への追及は別物です。数字が「忙しい時間帯に手が足りていない」という構造を示しているなら、直すべきは分担や導線のほうです。スタッフが安心して記録を付けられる状態でなければ、そもそも正確な数字が集まりません。
集計と月次の振り返りは、医院の中で担当を決めて回すのが基本ですが、この「裏側の集計・報告」のような定型業務は、外部に任せるという選択肢もあります。自院で回すか、外に任せるかを判断するためにも、まず自院の数字の姿を知っておくことが出発点になります。
もうひとつの切り口: 曜日と時間帯
比率に慣れてきたら、電話予約については「いつ入っているか」も見てみてください。電話の件数を時間帯別に並べると、多くの医院で特定の時間帯への集中が見えます。たとえば午前の診療開始直後と、昼休み明けに集中しているなら、その時間帯の受付の分担を見直すだけで、電話の取りこぼしや会計待ちの緩和につながる場合があります。
Web予約についても、予約が「入った時刻」を見ると、診療時間外(夜間・早朝・休診日)の件数が分かります。この数字は、電話対応の時間と人員を考えるときの材料になります。診療時間外の予約が月にある程度の件数あるなら、それはWeb導線が果たしている役割の大きさを示しますし、逆にほぼゼロなら、導線のどこかで止まっているサインかもしれません。
数えるときの注意点
- 二重に数えない。 Webで仮予約した後に電話で確定した、といったケースの扱いを先に決めておきます。原則は「最終的に予約が確定したチャネル」で数えるのがシンプルです。
- キャンセルした予約の扱いを決める。 予約が入った時点で数えるのか、来院した時点で数えるのかで数字が変わります。入口の分析が目的なら「予約が入った時点」で数え、来院率は別に見るのが分かりやすい方法です。
- 月ごとの営業日数の差に注意する。 祝日や年末年始で営業日数が違う月は、件数そのものが下がります。比較は件数ではなく比率を中心にし、件数を見る場合は営業日数で割った1日あたりでも見てください。
- 数字の変化に理由を探しすぎない。 比率が動いた月に何があったか(広告、口コミ、近隣の医院の動向など)を記録しておくことは有益ですが、因果関係を断定する必要はありません。「変化があった」という事実と「その月にやったこと」の記録が残っていれば、半年後に振り返るときの判断材料になります。
まとめ
- 予約の入口(電話・Web・LINE・来院時の次回予約)を定義し、新患と再診を分けて月次で数える
- 比率は「正解」を判定するものではなく、受付の負荷の偏り、導線の改善効果、再診の土台の強さを読むための物差し
- 比率だけでなく、来院率やキャンセルの出方まで見ると、次の一手が決めやすくなる
- 定義を変えず、同じ方法で数え続けることが一番大事
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