無料診断

急患枠の確保と予約枠の組み方


「予約がいっぱいで、急患を断ってしまった」。多くの院長先生が経験する場面です。痛みを訴える患者さんを断るのは心苦しいものですし、かといって予約の患者さんを待たせ続けるわけにもいきません。

この問題は、受付の頑張りや院長の判断の速さで解決するものではなく、「枠の設計」で扱う問題です。急患をどれだけ受けるかは、当日の現場判断に任せきりにするのではなく、あらかじめ枠として組み込んでおく。この記事では、急患枠の考え方、量の決め方、埋まらなかったときの扱い、そして受付の運用までを整理します。

なお、症状の緊急性の判断や、どこまでを当日に診るかは医療上の判断です。この記事はあくまで「枠と運用の設計」の話として書きます。実際の線引きは、各医院の診療方針に沿って決めてください。

まず、「急患」の定義を医院の中で決める

枠の設計の前に、「急患とは何か」を医院の中で言葉にしておく必要があります。定義が曖昧だと、電話を受けた受付スタッフがその都度判断に迷い、対応にばらつきが出ます。

たとえば、次のような分け方があります。

これはあくまで一例で、実際の分類と判断基準は院長が決めるものです。大事なのは、受付が電話口で迷わないよう、「どの言葉で聞いたら、どの枠を案内するか」の対応表を院内で共有しておくことです。症状の詳細な判断は医療側の仕事ですが、「聞き取って、決められた枠に振り分ける」ところまでは受付の型として設計できます。

枠の組み方には、大きく2つの型がある

型1: 急患専用の枠をあらかじめ空けておく

1日の中に「急患枠」と決めた時間帯を設ける方法です。たとえば午前の診療開始直後、昼休み前、夕方の決まった時間などに、30分〜1時間程度の枠を置きます(枠の長さは医院のユニット数や患者層で変わります)。

この型の利点は、急患の電話を受けたときに「空きを探す」作業がなくなることです。受付は決められた枠を案内するだけなので、対応が速く、ばらつきも出ません。予約の患者さんの待ち時間への影響も、枠として織り込み済みなので読みやすくなります。

弱点は、急患が来なかった日に枠が空いてしまうことです。この扱いは後述する「転用ルール」で設計します。

型2: 専用枠は持たず、当日の状況で吸収する

枠を決めず、キャンセルや空きが出たところに急患を入れる方法です。小規模な医院や、急患自体が少ない医院ではこの型でも回ります。

ただしこの型は、受付と院長の「当日の判断」に依存します。忙しい日ほど判断が後回しになり、「結局断った」「無理に入れて全体が押した」という結果になりがちです。型2で運用する場合も、「何時までに連絡があれば当日案内する」「これ以上は翌日案内にする」といった最低限のルールは決めておくことをおすすめします。

どちらの型が正解ということはありません。次の「量の決め方」で見る自院の急患の実績に応じて、選ぶ・組み合わせるのが現実的です。

枠の「量」は、過去の急患件数を数えて決める

急患枠を何枠置くかは、勘ではなく過去の実績で決めます。やることは単純で、過去3ヶ月程度について、次の数字を拾います。

「断った件数」は記録に残っていない医院が多いと思います。そこは無理に遡らず、今日から記録を始めてください。急患の電話があったときに、予約台帳やメモに「急患・当日対応」「急患・翌日案内」など1項目残すだけで、1〜2ヶ月後には自院のパターンが見えてきます。

目安の置き方としては、「平均的な週の急患件数」を基準に枠を置き、繁忙が読める時期(連休明け、年末など)は枠を厚くする、といった調整が現実的です。平均に合わせて枠を作ると、多い週にはあふれ、少ない週には空きます。それ自体は異常ではなく、「あふれた分をどう扱うか」「空いた分をどう使うか」のルールとセットで設計するものです。

なお、急患の受け入れ件数を増やすこと自体を目的化する必要はありません。枠の設計の目的は、「断る・受け入れるの判断を、その場の綱渡りから、決められた運用に移すこと」です。

埋まらなかった急患枠の「転用ルール」を決めておく

専用枠の弱点である「空いた枠」をどうするかは、枠を作るときに一緒に決めます。代表的な転用の仕方は次の通りです。

転用ルールがないと、枠は「誰も使わない空白」になり、現場から「あの枠は無駄だ」という声が出て、設計自体が形骸化します。逆に、転用が早すぎると急患が入る余地が消えます。「何時までは急患のために空け、何時を過ぎたら何に使ってよいか」を決めることが、枠を生かす条件です。

枠を「どこに置くか」も大事

量と同じくらい、枠を置く時間帯も重要です。置き場所の考え方は、医院の患者層と急患の電話のパターンで変わります。

自院の急患の電話が何時に多いかは、先ほどの記録(曜日・時間帯の偏り)で分かります。記録が貯まるまでは一般的な置き方で始め、数字が見えてきたら置き場所を動かす、という順番で十分です。

予約の患者さんへの影響をどう考えるか

急患枠を論じるとき、必ず出てくるのが「予約の患者さんを待たせることにならないか」という懸念です。ここでも、枠として設計することに意味があります。

枠がない状態で急患を受け入れると、その影響は予約の患者さんの待ち時間にそのまま乗ります。しかも、どれだけ押すかは当日まで分かりません。一方、急患枠を織り込んだ予約表は、「この時間帯は急患対応があり得る」ことを前提に組まれています。予約の患者さんの予約時刻の置き方(枠の前後に余裕を持たせる等)も含めて設計できるため、結果として全体の流れは読みやすくなります。

もちろん、急患の内容によっては枠を超えて時間がかかることもあります。それをゼロにはできません。ただ、「枠の中で起きた延長」と「枠がなくて起きた延長」では、現場の受け止めも、患者さんへの説明のしやすさも違います。

よくある失敗

受付の運用: 電話を受けたときの型

枠が設計できたら、次は受付の動きを型にします。

  1. 聞き取る項目を決めておく。 氏名、連絡先、症状の概要(いつから・どこが・どの程度か)、かかりつけかどうか。聞く項目が決まっていれば、電話が短くなり、医療側への引き継ぎも正確になります。なお、症状の詳細な評価は医療側の判断です。受付の役割は「必要な情報を揃えて、正しい枠に案内すること」です。
  2. 案内する枠を迷わない。 対応表に沿って、当日の急患枠か、翌日以降の枠かを案内します。「確認して折り返します」を減らすだけでも、患者さんの不安と受付の手間は下がります。
  3. 断らざるを得ないときの言い方を決めておく。 どうしても当日に入れられない日はあります。その場合も、「いっぱいです」で終わらせず、最短で入れる日時を具体的に提示する、症状が強い場合の相談先(地域の休日・夜間診療の案内など、医院の方針に沿った情報)を伝えられるようにしておくと、患者さんとの関係が切れにくくなります。ここも医院としての方針を先に決め、受付個人の判断にしないことが大事です。
  4. 結果を記録する。 当日対応したか、他日に案内したか、案内できなかったかを残します。この記録が、次の枠の見直しの材料になります。

枠の設計は、スタッフの負荷とセットで考える

急患を受け入れることは、診療側の負荷にもつながります。枠を厚くするほど、当日対応は増え、診療が押す日も増えます。院長が診療後に疲弊してしまっては続きません。

だからこそ、件数を数えておくことが効いてきます。「なんとなく急患が多い」ではなく「週に平均○件、多い週で○件」という数字があれば、枠を増やす・減らすの判断も、スタッフとの話し合いも、事実に基づいてできます。また、急患枠の運用を始めたら、月1回程度、枠の埋まり具合と「あふれた件数」を見直し、量を調整してください。最初から完璧な設計はできません。数えて、直す。その繰り返しが前提です。

始めるなら、最初の1ヶ月の進め方

いきなり完成形を目指す必要はありません。おすすめの順序は次の通りです。

  1. 1〜2週目: 記録だけ始める。 枠は変えず、急患の電話と当日対応の記録だけを付けます。曜日・時間帯・結果(当日対応/他日案内/案内できず)を残すところからです。
  2. 3週目: 仮の枠を置く。 記録のパターンを見て、まずは1日1枠から仮置きします。転用ルールの時刻もこの時点で決めます。
  3. 4週目: 対応表を院内で確認する。 受付が電話口で迷ったケースを持ち寄り、「急患」の定義と対応表を院長と一緒に直します。
  4. 月末: 数字を見て調整する。 枠の埋まり具合、あふれた件数、空いた枠の転用状況を見て、翌月の枠の量と置き場所を決めます。

この進め方なら、診療の流れを大きく変えずに始められますし、「枠を作ったら現場が回らなくなった」という事態も避けられます。設計は一度で決めるものではなく、数字を見ながら育てるものです。

よくある疑問

急患枠を作ると、通常の予約が取りにくくならないか?

枠として確保する分だけ、事前予約に使える時間は減ります。ただし現実には、枠のない医院でも急患は当日に入ってきて、結果として診療は押しています。枠の設計は「受け入れる総量を増やす」ことではなく、「すでに起きている受け入れを、予定の中に置き直す」ことです。記録を取ってみると、想定していたより枠が少なくて済むこともありますし、逆に多い週の偏りが見えることもあります。数字を見てから量を判断してください。

急患枠を患者さんに公表すべきか?

「急患枠があります」と大々的に掲げる必要はありません。枠は医院の運用の内部設計です。患者さんへの案内としては、「本日ご案内できる時間があります」のように、その日の状況として伝える形で十分です。公表すると、枠の使い方についての問い合わせ対応が増えることもあります。

スタッフが反対したら?

「枠を空けると、その分忙しくなる」と感じるスタッフは少なくありません。だからこそ、最初の1ヶ月のように記録から始め、枠の量を数字で決める進め方が大事です。また、転用ルール(空いた枠の使い道)と、診療が押した場合の扱いをセットで示すと、現場の不安は具体的な議論に変わります。不安の多くは「どこまで増えるか分からない」ことから来ます。量に上限の考え方があることを示すだけでも、受け止めは変わります。

まとめ


シカデスクは、歯科医院専門のフロントデスク運用代行です。Google口コミの返信や、定期検診の呼び戻し、数字の集計と月次報告といった「裏側の運用」を、医院の承認制で代行します。集計や下書きにはAIも使いますが、患者さんとの直接の接点は人間が担う、というのが私たちの原則です。予約枠の設計そのものは医院の判断で決めるものですが、その判断材料になる数字を毎月同じ形で届けることは、私たちが担える仕事です。

御院の受付まわりの現状は、公開情報だけで作る無料診断で確認できます。口コミの件数・評価・未返信の状況などを数字でまとめますので、患者さんの個人情報は一切不要です。

無料診断のご案内

無料診断を受ける